制度の隙間から考える、親亡き後のデジタル管理【第3回】

デジタル社会
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Digital Guardianship 03

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善意の代理はどこまで許されるのか

家族がログインしてあげることは、悪いことなのだろうか。

多くの家庭で、実際に行われていることです。

  • スマートフォンの設定を一緒に確認する
  • 通知を代わりに見る
  • 手続きの画面を操作してあげる

それ自体を一律に否定することは、現実的ではありません。

けれど、親として本当に気になるのは、そこではないはずです。

家族ではない第三者が、本人になりすまして操作してしまうことはないのか。

この不安のほうが、はるかに大きいのではないでしょうか。

デジタル社会は「本人前提」でできている

今の社会は、アカウントを中心に動いています。

  • 銀行
  • 行政手続き
  • 医療予約
  • キャッシュレス決済
  • 障害者手帳の情報管理

その多くが「本人ログイン」を前提に設計されています。

パスワード。
ワンタイム認証。
同意ボタン。

すべてが「本人が操作する」という前提です。

しかし、重度の知的障害がある場合、
本人が単独で管理することが難しいこともあります。

ここで、制度の想定と現実の生活にズレが生まれます。

なりすましという現実

近年、高齢者を対象としたフィッシング詐欺やアカウント乗っ取りは繰り返し報道されています。

偽の公的機関や金融機関を装った連絡により、ログイン情報を入力してしまい、第三者にアカウントを操作されるという構造です。

現時点で、知的障害のある人を直接標的にした「代理人なりすまし」の大規模な報道事例は確認できていません。

しかし、本人認証を前提とする仕組みである以上、
同様のリスクが構造的に存在することは否定できません。

ここで重要なのは、

誰かが悪いという話ではなく、
本人認証前提の社会は「代理」という存在を十分に想定していない

という点です。

マイナポータルの代理人機能は何を想定しているか

マイナポータルには代理人登録機能があります。

これは、本人の同意に基づき、代理人が行政手続きなどを行えるようにする仕組みです。
近年はオンラインで完結できる手続きも増え、利便性は確実に高まっています。

つまり、

デジタル社会の中で「公的に認められた代理の形」の一つ

といえます。

ただし、その設計思想は後見制度とは異なります。

マイナポータルと後見制度の違い

比較項目マイナポータル代理人機能後見人制度
根拠本人の同意家庭裁判所の審判
関与機関行政システム内家庭裁判所
性格利便性重視の仕組み法的代理制度
管理の透明性利用者側に委ねられる部分が大きい監督制度・記録あり
想定場面デジタル手続きの支援財産管理・契約全般

マイナポータルは、
日常的な手続きを便利にするための仕組みです。

一方、後見制度は、
法的に代理権を明確化し、責任の所在を整理する制度です。

どちらが優れているという事ではなく、

目的が違う

という点が重要です。

善意の支援と、悪意の越権

知的障害の子の多くに、家族による支援が必要です。

しかし、

  • 誰が
  • どこまで
  • 何を
  • どの記録のもとに

行っているのかが曖昧なままだと、
善意の支援と悪意の越権の区別がつきにくくなります。

問題は「家族が操作すること」ではなく、

透明性がない状態

にあります。

透明性があれば、支援は支援として位置づけられます。
透明性がなければ、不正との区別が難しくなります。

制度の隙間にあるもの

後見制度は、財産や契約を守る制度です。
マイナポータルは、利便性を高めるデジタル代理機能です。

しかし、

  • スマホそのものの統合管理
  • 継続的なアカウント保護
  • 日常のデジタル行動の見守り

を包括的に整理する制度は、まだ十分に設計されているとは言えません。

ここに、制度の隙間があると思います。

次回へ

制度を選ぶかどうかではなく、
どう組み合わせ、どう役割を分けるか。

次回は、後見制度と生活支援を組み合わせた
「網の目型の設計」について考えます。

親がいなくなったあとも、
デジタル社会の中で孤立しないために。

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