我が家の次男くんは知的障害のない自閉スペクトラム症で特別支援級に通っている小学校4年生です。
もう1ヶ月ほどで5年生となり、小学校卒業まではあと2年ちょっととなりました。
この記事を執筆した時点では「あと4年」と思っていましたが、あっという間に高学年になってしまったと感じます。
次男くんの中学校以後の進学について少しずつ情報収集を進めています。
執筆当時、不安があったので記事を作りましたが、今もあまり内容は変わっていないようです。
更新履歴
- 2023/03/08 令和3年のデータにて記載を更新し、通信制高校について追記しました。
小学校の支援級を卒業したら?
妻から、「中学校に進学時に特別支援級に進学すると、高校受験の資格が得られない。」という話を聞きました。
私は、「中学校は義務教育なんだし、ちゃんと通って卒業すれば高校受験の資格は得られるでしょ?」と思っていましたので、ちょっとしたショックを受けました。
これは、妻のママ友達の間での話なので、正確な情報ではないかもしれませんが、考えてみれば通常級の子と同じ基準で内申点評価を行った場合、担任の先生が普段見れない分だけ低い点数が付きやすいのかもしれません。
そうなると、内申点を重視する学校への進学に大きく不利になるのではないかと想像しました。
さらに、次男くんは精神障害者福祉手帳は取得しているものの、療育手帳の認定はなされていません。
支援校でも受け入れてもらえない場合、次男は高校に進学不可能になるのでは?という不安を感じました。
さらにネットを調べてみると、まさにその様になっている!という記事を見つけることもできました。
うむむ。さて、どうするか…
中学校特別支援級卒業後の進路に関するデータ
私は用心深い性質です。
このような話をなんの根拠もなく鵜呑みにするのは危険だと考えています。
そこで、まずは事実確認をすることにしました。
こういうとき、ネット上の文章(もちろん、本記事も含みます)は複数の検証を経た記事とは異なるため、確証バイアスのかかったものになりやすく、そのまま信じる事は危険です。
大事なことは自分で手間かけて調査することをおすすめします。
文部科学省に恐らくそのようなデータはあるのではないか?と思い参照すると、やはりありました。
卒業者の進路状況(平成30年3月卒業者)
特別支援学校中学部及び中学校特別支援学級卒業後の状況(国・公・私立計)
区分 | 卒業者(人) | 進学者(人) | 教育訓練機関等入学者(人) | 就職者(人) | 社会福祉施設等入所・通所者(人) | その他(人) |
---|---|---|---|---|---|---|
中学部 | 計 | 10,491 | 10,322 (98.4%) | 21 (0.2%) | 4 (0.04%) | 62 (0.6%) |
視覚障害 | 177 | 174 (98.3%) | ― (―) | ― (―) | 1 (0.6%) | 2 (1.1%) |
聴覚障害 | 402 | 400 (99.5%) | ― (―) | ― (―) | ― (―) | 2 (0.5%) |
知的障害 | 7,881 | 7,780 (98.7%) | 14 (0.18%) | 3 (0.04%) | 29 (0.4%) | 55 (0.7%) |
肢体不自由 | 1,698 | 1,657 (97.6%) | 2 (0.1%) | ― (―) | 2 (1.4%) | 15 (0.9%) |
病弱・身体虚弱 | 333 | 311 (93.4%) | 5 (1.5%) | 1 (0.3%) | 8 (2.4%) | 8 (2.4%) |
中学校特別支援学級 | 22,132 | 20,927 (94.6%) | 429 (1.9%) | 153 (0.7%) | 623 (2.8%) | 82 (0.8%) |
思っていたよりも高い進学率
上記のデータでは中学校の特別支援学級に通う生徒のうち、進学を選択している率は94.6%となっています。
悲観的な記事の多いネット上の情報に反して意外な内容でした。
ただし、この数字にもトリックがある可能性は否定できないので、実際には地域の教育サポートセンター等で実態を確認する作業は必要になるでしょう。
支援学級からの進学先について
令和3年について、より詳しいデータが存在したので、そちらを確認してみました。
この年の進学率は94.8%になっていました。
更に確認すると、中学校の特別支援級は、知的障害と自閉・情緒障害に大別されていました。
そして、おおよそ同数の生徒が在籍しているようです。
特別支援級からの進学先としては高校等と高等部(特別支援校の高等部)はほぼ同じ人数でした。
この事から、例外はあると思いますがおおよそ知的障害で支援級に通う子は特別支援校、自閉・情緒障害で通う子は高校等を選択しているのではないかと思われます。
データ参考:経済産業省ホームページhttps://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1406456_00010.htm
結果として、データからはかなりの高確率で高校進学は果たされる事になります。
何故、ネットにはこれほど絶望的な状況が書き込まれるのでしょうか?
もはやあまり実りのある思考とは思えませんでしたが、一応調べてみることにしました。
ネット上の悲観的記事が目につく理由として
- かつて、特別支援級からの進学率は非常に低く、ネットに書かれている情報はその頃のもの
- 特定の進学先(例えば、学費の安い公立高校や偏差値の高い進学校)だけに絞った意見
- 多くの人が不幸な事例に注目することによりSEOが働いた
ではないかと私は考えました。
そこで、検証してみます。
検証1. 特別支援級からの進学率の推移
こちらについては、やはり文部科学省のHPにデータが存在しました。
確認できる最も古い情報は、平成17(2005)年度なので、15年ほど前の情報になりますが、この時点での高校進学についても88.6%となっており、現在の状況と比べ決して高くはありませんが、それでも全く進路のないという状況とは見えません。
更にさかのぼって昭和55年までのデータも存在しましたが、ちょっと内容が違うように感じましたので、確認の対象外としました。
検証2.特定の進学先に限定した親御さんの意見である
こちらについては、はっきりした情報は自治体のHPから見つけることはできませんでした。
内申を重視する進路を選びたい場合には、内申点の評価では先生による定性的評価が重視される可能性が高く、そもそも通常級のお子さんと同じ土俵(テストの点数や普段の活動)での評価が難しいと考えられるため、「ありそう」という気はします。
しかし、確証はないのでこの辺は教育サポートなどに確認しなければならないでしょう。
もし、確認が取れたらこの記事をアップデートすることにします。
検証3.不幸事例大好きネット民によるSEO効果
インターネット検索の宿命として、「よく見られている」記事が検索上位に来やすい性質があります。
これをSEO(Search Engine Optimization)といいます。
「特別支援校 中学 高校進学」などのワードで検索した結果、このキーワードで人気のある記事(=不幸な出来事が書いてある記事)が検索上位に来るため目につきやすくなっている。という仮説です。
改めて検索してみると少なくとも1ページ目には「悲しい現実」とか「特別支援級の生徒の進学率は26%」などネガティブワードてんこ盛りでした。
私が不安な情報を集めてしまったのはこのため。が本記事での結論としたいと思います。
なお、本記事が検索エンジンのトップに表示された場合、この仮説は否定されることになりますが、まぁきっとないと思いますので、問題ないでしょう。
今日の秘訣!
今の制度が継続される前提ですが、これらのデータ上からはより好みをしなければ少なくとも高校進学は可能である。と言えそうです。
実際には様々な選択肢がありますし、法整備なども進み増えているのが現状です。
確認できちょっと安心しました。
この先、コロナで後退しなければいいのですが…
このシリーズ、まだ調べていますので少し間を空けて続きを書こうかと思います。
- ネットは便利だけど、検索結果を鵜呑みにしてはいけない。
ネット民が「読みたい」と思うものが出てくる。そして、ネット民は悲しい話が好き。 - 中学校の特別支援級からの進学は「可能」といえる